◆◆現在の再生医療について◆◆
2012年、iPS細胞に関する発表で、
現在の「公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団」理事長の山中伸弥氏が、
ノーベル生理学・医学賞を受賞されて以降、
ips細胞の医療応用に向けて、様々な臨床研究や治験が行われています。
〇 初のiPS細胞による医療
2013年8月に世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われました。
患者は40代女性で、角膜上皮幹細胞疲弊症を患っており、
両目の視力がほとんど無い状態でした。
行われた手術は、iPS細胞由来の角膜を左目に移植するといった内容でした。
手術は無事成功し、患者の視力は、新聞や本が読める状態にまで回復しました。
研究機関は、この後も、4例ほど手術例を掲げており、
安全性・有効性の確認を行い、
保険医療として適切がどうかの評価を行う段階へ持っていき、
最短で2024年には一般治療へ発展させることを目標としました。
〇 現在立ちはだかる課題
前人未到の医療研究の実用化には、あらゆる課題が立ちふさがります。
それは、
・原料となる細胞の確保(細胞培養に膨大な時間と費用がかかる)、
・「生きた」細胞の品質の確保、
・高い技術を持つ技術者の確保、
・細胞製造にに要する莫大なコストの削減、
といったものです。
そんな数ある課題のうち、「原料となる細胞の確保」「細胞の品質の確保」
に大きく貢献し得るイノベーションが行われたのです。
それは、
沖縄に拠点を置き、再生医療・細胞培養に関する研究・開発を手掛ける
「由風BIOメディカル(以下、由風BIO)」が自社工場内に、
「日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)」及び
「株式会社日立製作所(以下、日立)」との
協創を通じて、最新式の細胞培養加工施設(CPC)を構築し、
CPCでの受託製造を含めた、バリューチェーン統合管理プラットフォーム(HCVT RM)
を活用したことです。
◆◆イノベーションにより期待できること◆◆
この「バリューチェーン統合管理プラットフォーム」は、
病院や物流企業などのステークホルダーが
クラウド上でスムーズに情報連携できるため、
製品のトレーサビリティを確保し、取り違いを防ぐことができます。
このシステムの導入について、日立は、
薬機法(医療品・医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律)
の領域で実績があり、これを
の領域へ適応するのは初の試みです。
これにより期待できることは多く、
まずCPCに関して、
各工程ごとにモジュール化(要素分割)されており、独立構造を取っているため、
生産の多様化・大規模化など、あらゆるケースに応じての
設置・増設が速やかに行え、稼働効率を大幅に上げます。
また、二重天井方式を採用し、気流を考慮した上での
日立産機システム製造のFFUモータの回転速度制御による
室圧の維持、風量の制御により、
従来のダンパでの風量制御に比べ、大幅に消費電力を低減させることができます。
環境モニタリング設備により、厚労省令にあたるGCTPへの対応も可能です。
日立産機システム製造の再生医療キャビネットにより、
検体管理や製造管理におけるオプション対応が可能であり、
設備・機器の自動化を視野に入れたトータルエンジニアリングの構想も
より現実的に考慮することができます。
次にHCVT RMに関して、
病院、製薬企業、受託企業、物流企業など、
共通サービス基盤であり、
共通基盤による一元管理により、業務・企業連携がより簡便なものになります。
また、各ステークホルダーの工程進捗のリアルタイム共有により、
スケジュール調整がより迅速なものになります。
さらに各工程における個体識別が透明化し、
確固たるトレーサビリティを確立することができます。