日本の大手電機メーカー、東芝により
世界の常識を一変させる新型電池が開発されました!
その名も”LNMO電池”
何の事だかさっぱり・・・って感じの名前ですね。笑
これはL(リチウム)、N(ニッケル)、M(マンガン)、O(酸素)
の4元素の頭文字を取ったもので、これらの物質を電池の正極に用いているそうです。
綺麗にアルファベット順になっていてどこか遊び心を感じます。
◆◆目次◆◆
充電し繰り返し使用可能という特長を持つ「二次電池」
今回開発されたLNMO電池も、この二次電池に該当するのですが、
この二次電池の歴史は、
1859年フランスのプランテ氏の発明した「鉛蓄電池」に端を発します。
鉛蓄電池は、正極(陰極)に酸化鉛PbO2、負極(陽極)に鉛Pb、電解液として希硫酸H2SO4が用いられます。(下図は放電時の大まかな流れです)
この鉛蓄電池は
・重量が重い
・電解液が強酸のため、破損時の危険性が高い
・電極として用いる鉛の、廃棄時の環境負荷が大きい
といった課題がありました。
1899年スウェーデンのユングナー氏によって次なる二次電池「ニカド電池」
が発明されます。
「ニッケルカドミウム電池」を略した「ニカド電池」は、
正極(陰極)にオキシ水酸ニッケルNiOOH、負極(陽極)にカドミウムCd、電解液に水酸化カリウムKOHが用いられます。(下図は放電時の大まかな流れです)
・電極の溶解、析出が無いため電極への負荷が少ない
・耐久力が上がり、破損のリスクが小さくなり、長時間使用しても性能が落ちにくくなった
といったメリットがありましたが、一方
・自然放電率が高く、電力の維持率が低い
といった課題がありました。
1990年日本で、これらの課題を解消すべく誕生したのが「ニッケル水素電池」でした。
ニッケル水素電池は、正極(陰極)にオキシ水酸ニッケルNiOOH、負極(陽極)に水素吸蔵合金MH(Mg)、電解液に水酸化カリウムKOHが用いられます。(下図は放電時の大まかな流れです。)
・自然放電率が低く、電力の維持率が高い
・電極として用いる水素吸蔵合金(MH)は、廃棄時の環境負荷が小さい
という所で、課題を克服することに成功しており、また
・低コスト
・耐久力が高く、破損のリスクが小さく、長時間使用しても性能が落ちにくい
といったメリットも相まって、現在
・モバイルバッテリー
・電動工具
・電動自転車のバッテリー
などで使用されています。
リチウムイオン電池ですが、その研究、開発、実用化までの歴史は非常に長く、
1980年イギリスのグッドイナフ氏とその助手の水島氏によって、
正極としてコバルト酸リチウムLiCoO2
を用いる仕組みを発見したことに端を発します。
1985年日本の吉野彰氏によって負極として炭素系の物質
を用いる仕組みが発見されました。(この功績が讃えられ、吉野氏は2019年ノーベル化学賞受賞)
1990年商品化に至りました。
現在使われているリチウムイオン電池は、
正極(陰極)が
いくつかのリチウムイオン含有遷移金属酸化物
(コバルト酸リチウムLiCoO2、ニッケル酸リチウムLiNiO2、マンガン酸リチウムLiMn2O4、リン酸鉄リチウムLiFePO4、など)
によって構成されており、
負極(陽極)には炭素系物質が用いられます。
一部、低結晶性のハードカーボンが用いられたりもします。
電解液には、
引火性有機溶媒
(炭酸ジメチルC3H6O3、炭酸ジエチルC5H10O3、炭酸エチレンC3H4O3、炭酸プロピレンC4H6O3、など)
が用いられます。(下図は放電時の大まかな流れです。)
・高電圧、高電流が得られる
・軽量
・エネルギー効率が良く、急速充電が可能
・寿命が長い
といったメリットがあり、現在
・電気自動車、ハイブリッド車のバッテリー
などで使用されています。
★新型のリチウムイオン電池、LNMO電池!★
そして2023年、日本の東芝で開発されたのが、LNMO電池です。
まず大きなメリットを挙げると、
従来のリチウムイオン電池に含まれていた、
レアメタルであるコバルトを使わず、
環境に対して低負荷、低コストな生産が可能だという点、
そして従来のリチウムイオン電池に比べ
圧倒的に高い電圧で作動させることができ、超急速充電が可能だという点です。
そしてこのLNMO電池の開発にあたり課題となったのが、
あまりに高い電圧で作動させるあまり、正極の金属が溶出してしまい、
それに伴い電解液が分解され有毒なガスを発生させてしまうという点です。
しかしこの課題も更なる技術開発により解消させたのです。
正極の金属の粒子表面をスピネル構造に改質させることによって、
金属の溶出量を低減させることに成功、
さらに、金属の溶出物は、負極表面でガス発生を促進していることを突き止め、
これにに対し、負極にニオブチタン酸化物を用いて、
負極表面で無害化させることに成功したのです。
↓ スピネル構造(複合金属酸化物の結晶構造の1つ)
(下図は放電時の大まかな流れです)
★LNMO電池の開発に関する業界の動向★
LNMO電池に関する研究・開発は、
大学、企業含め非常に多くの機関で取り組まれており、
正に大白熱の項目なのですが、
この開発に成功した東芝が決してこの分野に関して
大きな存在感を放っていた訳ではなかったのです。
その上、この東芝の開発は、その他多くの機関で取り組まれていた開発内容とは、
方針、観点そのものからマルっと異なるものでした。
高電圧の影響で正極の金属が溶出することで、
電解液が分解されガスが発生するという課題は多くの開発機関で同様のものでした。
そこで多くの機関は、
電解液をもっと別の物質に置き換えられないものかと考えていました。
そんな中各組織で見られたのが、
固体電解質を用いた「全固体電池」の開発でした。
しかしここで新たに生じていた課題が、
電極間をリチウムイオンが移動する際の移動抵抗が高まり、
電池としての出力が上がらなくなるというものでした。
これについては、研究機関で「超リチウムイオン伝導体」というものが
開発されたりしています。
実際これらは従来のリチウムイオン電池に用いられる電解液
のイオン伝導率を上回る数値を叩き出しています。
また従来の有機溶媒の引火性という点を見直そうと、
フッ素化合物を取り入れようという動きなども多くありました。
つまり、多くの研究者、開発者が求め、導出に至った道筋とは異なった、
ある意味で”型破り”で、目から鱗が落ちるような
道を辿った開発だった
というわけですね・・・