台湾の市場調査会社、Trendforceによって、
4月~6月までの半導体の売上について、
各メーカーごとの売上高が、ランキング形式で公表されました。
◆◆目次◆◆
◆ランキング結果◆
1位はTSMC(台湾)で167億3500万ドルとなりました。
まあ売上額もとてつもないですが、
さらに驚くべきは、台湾の半導体世界シェア率で、
驚異の60.1%!
この桁外れな割合に裏打ちされた売上額な訳です…
続く2位はSamsung(韓国)で34億4600万ドルとなりました。
Samsungは、スマホの世界シェア率18%(トップ)を誇る大手電子機器メーカーです。
恐るべき裾野の広さですね…
3位はGlobalFoundries(米国)で18億4100万ドル、
4位はUMC(台湾)で17億8400万ドル、
5位はSMIC(中国)で14億6200万ドル、
6位はHuaHong Group(中国)で8億4500万ドル、
8位はPSMC(台湾)で3億3200万ドル、
9位はVIS(台湾)で2億6900万ドル、
10位はDB Hitek(韓国)で2億3400万ドルでした。
具体的にランキングを見て、改めて台湾の席巻っぷりをひしひしと感じるとともに、
アジアの半導体企業の勢いの良さにも驚きます。
台湾、韓国あたりは、アジアNiesとしても名高い工業の先進的な地域なので、
言われてみれば凄いのかも、とは思いますが、
これほどの物とは…と、ビビる気持ちも正直あります。笑
◆売上額が軒並み低下!?その理由とは?◆
上で紹介した、2023年第一四半期の半導体売上額上位10社の、
売上額の合計は、273億300万となるわけですが、
実はこれは、2022年第四四半期の売上額の合計から、18.6%も減少しています。
これにはどうやら、需要そのものの変化が影響している可能性があります。
最終製品(パソコン、スマホ)の市場が、
インフレの煽りを受け、低迷の一途を辿っていることが影響してそうです。
インフレは、根本的な消費者の購買意欲を低下させるだけにとどまらず、
暗号資産の価格暴落のトリガーにもなり、マイニング向けの半導体需要も
大きく低下させてしまっているのが痛い所です。
そもそもそれまでのコロナ渦で、
在宅勤務、オンライン学習の普及に伴って、
このあたりの需要が急増していたという経緯も、
ここでの数字の大幅な変化に起因してるのかもしれません。
◆今後の展望◆
しかし今後、少なからず、状況の改善が見込める可能性はあります。
一つは、GPU設計に特化した企業からの需要の増加です。
特にAI向けGPUは、時代的に需要に勢いのあるコンテンツで、
製品そのものの需要の低迷の風をモロに受ける流れから、
ある程度は改善されそうではあります。
もう一つ、GAA製品の需要の増加です。
これは何と言っても最先端技術であり、
上で挙げたトップ企業のTSMC、Samsungなどは、この開発に
多大な投資を行っており、
そう遠くない未来、
売上の中心にこういった製品が位置付けることになるかもしれないのです。
・GAAとは?
GAAは(Gate All Around)の略で、
簡単に言うと、半導体の構成要素である「トランジスタ」における新技術です。
現在一般利用されているMOSFETと呼ばれるトランジスタには、
電流の流れを制御するために、「ゲート」と呼ばれる金属電極を用いています。
しかし、
量子トンネル効果により、ここから一部の電気がすり抜けてしまうことが、
確率的に起こってしまうのです。
これは製造過程での欠陥の有無に関係無く、
半導体の特に小さいプロセスになればなるほど、加工が微細化し、
どうしても絶縁体を薄く作らざるを得ない中で、
ほぼ必然的と言って良い状況下に追いやられて、起こってしまうことなのです。
この対策として、現在の最先端半導体プロセスでは、
FinFETという、上、左右を取り囲む構造をしたゲートが用いられているのですが、
それでも問題の完全な解決には至っていませんでした。
そこで、新たに導入されようとしているのが、
電流の流れるチャネルを、上下左右の4方面から取り囲む構造を用いたGAA
という訳です。